陰陽道と攻防一体

合気道を始めた頃、姓名判断や九星気学の運命鑑定に興味を持っていました。ずいぶん以前の話ですが、自宅購入の相談の為、大手出版社主催の文化教室等で大変有名であり、その道の大家である方のご自宅に参りました折、運命鑑定談義に花が咲き、「弟子になってすぐに占い教室の指導にあたらないか」と申し入れられた事もあります。腕前を試されて会社の先輩の兄弟の死とその原因と没年を占って当てたこともありましたが、残念ながら自分の父の死を占って、その通りになってしまって以来、その道は封印しております。

そのような事から、陰陽道については非常に興味を持っており、合気道の理合の中にも、この陰陽道が流れていると普段から考えております。

以前にも書いたことがありますが、陰陽道以外に武道では、ブルースリーの生き様や「截拳道」の教えにも興味を持っておりました。良く知られたことですが截拳道のマークは太極図がそのモチーフであり、太極は陰陽思想と結合して宇宙の根源として重視された概念です。

その截拳道では「陰陽思想とあいまって、「攻防一体」を理念とされている。」とブルースリーの伝記ドラマ「レジェンドオブブルースリー」で説明されておりました。

武道の多くで、身体は陰陽の動きを致します。陽にかざした徒手は一瞬にして陰に転じ、その瞬間に他方の徒手は陰から陽に転じます。この陰陽の動きが即ち攻防一体の動作になります。

手・腰・足、身体の各部が陰陽の輪廻で動きます。空手等の徒手による打突系武道において顔面への正面突きを一方の手の甲側で外に体捌きと共に開いて防御すると同時に他方の徒手で突きや当身を同じ腰の回転動作の中で入れる攻防一体の型が多く見られます。この動作は、合気道の相半身交差片手持ち一教動作に相通じます。

合気道の相半身交差片手持ち一教動作は、約束稽古、型稽古なので受けが取りの手を交差持ちで取ると言う約束になっておりますが、この稽古の先に顔面へのパンチや正面打ちへの展開技があります。

つまり、片手を取りにくる受けの動作は、正面突きや正面打ち動作の代表として行なわれるものであり、片手取りという攻撃への対処を稽古していれば正面突き、正面打ちにも対処ができるようになると言うことが約束稽古であり型稽古の効用です。

ですから合気道の相半身交差片手持ち一教動作の稽古をしていれば他の打突系武道と同様に攻防一体の動作が習得できます。持たれた手を丸く外側に体捌きと共に開いて受けの手と和合して導く手は防御の手であり、受けの肘に下から突き上げる動作は受けへの当身の動作であるのです。防御とした手は、導きの手として防御から攻撃に、当身とした攻撃の手は起き上がろうとする受けの動作を防ぐ防御の手へと瞬時に変転し陰陽の入れ替わりが激しく輪廻転換して行なわれます。

最初に習う一教動作。ここに陰陽の理合と攻防一体の理合が合理的に含まれています。この技の理合奥深くを知る事だけでも合気道の合理性を知る一端と成ると考えております。

何度も書きました翁先生の道歌
「敵人の走り来たりて打つときは、一足よけてすぐさま斬るべし」
も陰陽、攻防一体を表されたものだと考えて、日々の指導の糧と致しております。