相半身交差持ち一教押え込み

相半身交差持ち一教抑え込みの技は、眞武館が始まって以来、稽古のはじめに必ず行って来た技であり、最も大切にしてきた技である。また、永年稽古を行ってきても、矢張り最も難しい技でもある。門川師範からは、「一教動作」とは押え込みの動作ではなく、斬り上げの動作であるとお教えいただいている。昨今、この技を押え込み動作だとして間違ったこだわりで稽古をされている方が多く見受けられる。眞武館では、門川師範にお教えいただいた「切り上げ動作としての一教動作」を大切にした稽古を心がけている。

眞武館の道場開き当初から、取りが短刀を逆手持ちに持ち、受けの腹を切りつける短刀を受けが交差持ちで押さえに来るところを、くの字に死角に入る足捌きで受けに対して斜め45度の死角から入り身をし、短刀を切り上げ首を掻き斬る様に打ち下ろす事で受けの押さえに来た腕を抑える事で一教抑え込み技として指導して来た。

また、木剣を腰に携えて、木剣を抜刀する為に受けの死角に入るようにくの字に歩みながら柄に手掛けをしつつ、鞘ごと前方に抜き受けの側面の腹に柄で当身を入れ、鞘を腰に戻しつつ抜刀して正面打ちに斬り上げ、斬り下ろして、手がけの手を押さえに来た受けの交差持ちの腕ごと押さえる事で剣の理合いでの一教抑え込みとした。

今回は、受けに交差持ちに行く手と反対の手に短刀を持っていただき、くの字に捌いて網代に捌いて一教斬り上げ動作で入り身してくる取りの腹を受けに突いて頂き、受けに交差持ちに持たれた瞬間には受けを制して反転させ、短刀で突けない様に隙無く一教抑え込みに入る稽古を行っていただいた。

色々なパターンの交差持ち一教抑え込みが有るが、中心にあるのは同じ理合いである。相対した時には勝っているのが合気道であるから、触れた瞬間には完全に相手と結び制していなくてはならない。また、合気道は一刀一足法であるので十分に入り身して、一刀の下に受けを斬り下げて抑え込まねばならない。

受けの真正面で技を行い、受けの当身や突きを入れられる様では技として成立しない。また、抑え込みと言う名称に拘り、受けの腕を上から抑え込んでいるようでは技の本質が見えない。そこには一刀一足法の理合いがあり、打ち来る敵をかわして、一刀に斬る心得が大事であり、翁先生が読まれた道歌でもある。

「敵人の走り来たりて打つ時は、一足よけてすぐに斬るべし」